人間はどうやって死んでいくのか [影響を受けたものごと]
人間はどうやって死んでいくのか―組み込まれた「死のプログラム」の謎
- 作者: 米山 公啓
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 1999/01
- メディア: 単行本
3年ほど前、父が亡くなった。
昨日まで普通に生活していた人が突然いなくなる。その欠落感を40数年生きてきて初めて経験した。
それまでに、祖父母や叔父叔母の死を経験してはいたが、生活を共にしていた肉親の死は初めての体験だった。
糖尿病だった父はお決まりのコースをたどり、最後は腎不全で血液透析に1日おきに通うのが人生最大の日課になっていた。
足の壊疽は2回目、心臓はペースメーカー入り、透析のシャント手術は血管がもろくなってしまい3箇所も作ったけど調子が悪く、厳密な水分制限や食事制限はもちろんのこと、腰痛もひどくなり全身ぼろぼろではあった。けれど、今日明日命に危険があるという状況には見えなかった。
臨終の瞬間を誰にも看取られることなく、風呂場で息を途絶えた父の、最終的な死因は結局はっきりしなかった。
病理解剖は事件性がないので、やってもやらなくてもいいと言われたので、かわいそうだということでしなかった。死亡診断書を書いてくれた監察医の先生は、父の病歴を聞いて唖然とした顔で「解剖をするまでもないでしょう。もう、充分にお父様はがんばりましたよ。」とおっしゃってくれた。
死亡診断書に書かれた死因は「心不全」だった。その、心不全の原因は糖尿病である。
一緒に暮らしていながら、なす術もなく見守るだけだった自分。本当はもっと何か出来なかったのかと、後悔に何ヶ月も苛まれながらもがくように本書を見つけ、すがるように読んだ。
人が死ぬということについて、目を逸らさずに一度考えてみるのはいいことだと思う。そして死の原因は決してひとつではないということ。複雑で精緻な肉体がどのようにして死へ向かっていくのかを考えさせられる一冊です。
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